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今井真央さん

katsuyaku_imai01.jpg今井真央・プロフィール

東京生まれ。35歳。保育士。
2006年に佼成学園を卒業し、大学に進学。2010年よりMRとして社会人のキャリアをはじめるも脱サラを経験。
2018年4月「おかざき森のようちえんサマーブルー」を発足。額田の自然を活用し、親子で野外保育活動を実践中。
同年9月、冒険遊び場「おかざきプレーパーク」を発足。無料で誰もが自分の責任で自由に遊べる公園を開拓中。
2020年4月公立学校以外の新しい選択肢「大地の学校ロータス」を設立。

幼少期からもっていた、教育に対しての疑問

僕は幼少のころから学校になかなかなじめず、「右向け右」と言われたら、左を向くような子だった。枠にはまる子は良い子で、枠にはまらない子は悪い子。
本当にそんなことで良いのかという疑問があって、自由な学校があるべきだ。そういう学校があったら良い。そんな考えが漫然とあった。

大学の頃、何となくテレビをつけて情熱大陸を見ていると、「よみたん自然学校」という沖縄にある幼児向けの学校が取り上げられていた。
そんな学校を設立された小倉さんという方は、関西の有名私立中学・高校を卒業して国立大学に進学。その後も大手総合商社に勤務。順風満帆なキャリアを積まれていたが、幼児教育をはじめられた。僕と同じような考えを持つ人がいるんだと、刺激を受けた。

そんな小倉さんの「与えられたことは完璧にこなすことはできるが、自分で考え、やりたいことは全く思いつかない」という言葉には衝撃を受けた。
幼少のころから、組織であることの生きづらさ。なぜ、生きづらいのかを考えた時に、学校や教育の在り方に疑問があった。

大学を卒業して、僕はサラリーマンになった。

脱サラして教育の分野に進出

大学時代から教育をずっとやりたかったけれど、安定した収入が欲しいという理由だけで、医薬品を病院の先生に紹介する営業(MR)になりました。そして、初配属が愛知県岡崎市でした。

MRの仕事は福利厚生は充実。連休もとりやすい。7年間勤めて、営業の成績も上々。
やれば、やっただけの数字がついて来たことも追い風で、トップセールスとして、会社からの表彰も受けました。日々、充実はしていた。

しかし、いい日は続きませんでした。

ある時「心の病気」になって会社に行けなくなってしまいました。

会議中に、ぼろぼろ泣いたこともありました。
結局、自分の心が壊れて、会社に半年くらい行けなくなった。

そんな疑問を持っていた時に、幼馴染が飲食店をやると決めたと連絡がきて、その幼馴染から「学校作るって言ってたじゃん」と言われる。ハンマーで勝ち割られたくらいの衝撃をうけた。

「僕がやめても、ナンバー2がトップ営業マンになるだけ。」
「安定した暮らしだけが、幸せなのか?」

自分の変わりのいる仕事ではなくて、自分でなければ出来ない仕事をやろう。
自分の心は決まった。学校をつくることを決めた。

喫茶店だったスペースを改装して学校運営をスタート

最初は小さいな喫茶店だったスペースをリフォームして、学童保育をはじめた。
新しくはじめた学校の隣は小学校で、子ども達が通うにもアクセスが良い。先ずは、ニーズのありそうな学童保育からはじめた。
しかし、本当にやりたいことを突き詰めて考えれば、フリースクールだった。

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(田んぼ:今のロータスは山あり、川ありの自然に囲まれた環境です。)

学校時代の出会い

中学時代はものすごく、悪い生徒だった。職員室に何度も呼び出された。学校は退学となる一歩手前だった。
そんな時に、内野先生から「お前は向けるエネルギーの方向を間違えているだけだ。」と言われたことに、一念発起。中学校三年生で猛勉強をして、高校からアメフトをはじめることにした。

アメフト部では、文武両道でなければ入部は認めないと言われて勉強もがんばった。
澤根先生には授業中に悪口を言ったこともあったが、
「真央が本気ならば、朝から勉強しよう。7時に来い。」
そう言ってくれて、マンツーマンで勉強を教えてもらった。

北爪先生からは、地学の授業ではほとんど寝ていたので「授業が終わったら来い」と言われて、それでも行かないと、当時の部活に乗り込んできて二人で話し合った。

僕は生意気にも「先生の授業面白くないじゃん!」といえば、北爪先生は授業の前に雑談を入れてくれるようになった。

大人が自分の意見を取り入れてくれたことに、当時の自分の心は揺れ動かされた。

沢山のいい先生との出会いが佼成学園ではありました。その出会いの上に「今」があります。今、思えば悪さをして目立つしか自己表現の場が無かったんです。

高校ではアメフトに熱中した

アメフトでは、最初はオフェンスに所属。アメフトには作戦があって、みんな覚えて いるのに自分だけが覚えられない。

みんなから作戦やサインを教えてもらっているのに、覚えられない。みんなの動きについていけない。苦しい時代が続いた。そんな状況だったので、ポジションの変更を余儀なくされてディフェンスに移った。

そこで出会った小池コーチには、自分の良さ発掘してくれた。小池コーチには「いいか、作戦を3つだけ覚えろ」と言われて教えて頂いたフォーメーションを徹底的に自分に叩き込んだ。

関東大会に出場して、決勝戦。向かう相手は慶應義塾高校。
よく、ゾーンに入るというけれど、その決勝戦ではまさに、相手の次の動きが見えた。チームも優勝して、MVP「最優秀ラインマン賞」を頂いた。高校時代の良い思い出です。

大学でも続く恩師との繋がり

大学はアメフト推薦で入学。アメフト部に入部して直ぐの春の大会でもスタメンで起用されて、自分で言うのも気恥ずかしいですが、期待の星と言われていました。

周りも持ち上げるので、鼻持ちならない態度が出ていたんだと思います。
アメフトでのプレーは良かったけど、色々とあってメンタルがやられてそこから引きこもりになった。そんな時、アメフト部のみんなや家族はアメフトを続けるように言われた。

「辛いことから逃げているだけだ」
「アメフトで入学させてもらったんだから、続けなきゃ」

そんな言葉は僕にとって、とてつもなくプレシャーになっていた。

そんな時に、恩師である内野先生に電話をした。
「アメフトをやめても大丈夫だよ。真央は真央のままだから、大丈夫だよ」

内野先生の言葉の裏には「愛」があった。
自分という存在そのものの肯定をしてくれだことが、どれほど自分の力になったことか。今振り返っても、そう感じている。

今でも「真央は思い出の生徒だからね」と言ってくれることが嬉しい。
大人の男性から愛情をもらうなんて、そうそうない。自分は自分のことを落ちこぼれだと思っていたけど、内野先生が見捨てずにスポットライトを当て続けてくれていた。有難いことですね。

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(玄関:休みの日は親御さんのためのイベントを開催しています)

子ども達も親御さんも苦しんでいる。

現在、ロータスではお母さんたちにコラムを書いてもらっています。
子どもが小学校や中学校を不登校になって、苦しむ親御さんも相当数いる。
ロータスのようなフリースクールに通い始めて、子どもだけではなく親としても学べたという声を聞く。そんな声を今は、集めています。

「学校に行かない」といった子どもの中でロータスに出会う。自分がたくさん学べたというお母さん、お父さんががいるんです。子どもと大人、ともに相乗効果がおきる。

もともと、やりたかったこと。「学び」の選択肢を増やす取り組みをしたいです。

これまで、僕は人に頼るのは苦手でした。
でも、大きいことをやるにはヒトの力を借りなければいけない。
今はその想いを共有する為に、本を出版しようと考えてクラウドファンディングという未知の領域にも挑戦しています。

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(お庭:子ども達がデザインしたツリーハウス?!)

岡崎市初 高校卒業の資格がとれるフリースクールが誕生

当初は義務教育機関以外の公教育(公立以外の選択肢)が無いことが社会課題だと感じ、学校になじめない子たちを大地の学校ロータスは受け入れていました。

しかし、その子ども達が成長した時に、義務教育を終える子が「来年からロータスに通えなくなっちゃうの?」と話しかけてくる子がいました。

そこで、今は通信制の高校と連携もすることになり高卒の資格が取れる岡崎市初のフリースクールができました。一つ一つ、目の前にある課題を解決しながら。今は前進あるのみです。

フリースクールの次にやりたいこと

僕は村づくりをやりたい。

今は、どうしても資本主義で生きていくしか選択肢がない。
稼げるか、稼げないかの二択になっていく。選択肢が一つしかないことには息苦しさを感じる子もいる。

音楽とか、好きな子もいる。ゲームが好きな子もいる。
その才能にも、価値がある。そんな、それぞれの子どもたちのもつ価値を肯定するコミュニティーを大事にしていきたい。

全国には「エコビレッジ」という事例がいくつかあります。その事例を見学して、たくさんの先輩方からお話を聞いてきました。
「大地の学校ロータス」を発展させて、世代や年代を超えて、暮らしを支えるコミュニティーを作っていきたい。
その一つの形が「村づくり」だと考えています。

今は、愛知県岡崎市にいます。東京のような都市とは違って米農家も近くにおり私たちの活動を応援してくれています。
自分たちで作物を作って、みんなで分けて食べていく。自給自足でやってける。岡崎市には地域で支える風土があります。

東京であれば、家賃や食費などである程度まとまったお金がないと生活をしていかなければいけないのですが、ここだと5万円でも生活していける。
半分は自給自足で食べる分は自分たちで何とかする。そして、半分は好きなことをやって生きていくような世界を作ることができる。このような世界は個人で作ることは難しいので、皆で支え合うコミュニティ形成を行っていきたい。
価値多様化が叫ばれているにも関わらず、多様な子ども達の個性を生かす社会システムが少ないので息苦しさを感じる子ども達も多い。
そこで「大地の学校ロータス」を発展させていきたいです。

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(お庭:子ども達と作ったピザ窯)

編集後記

名古屋に取材に行きました。岡崎市の見合(みあい)駅で待ち合わせ。
今井さんが軽トラックで迎えに来てくれましたが、泥臭い。
理屈だけじゃない。想いで動く今井さんは輝いて見えました。
「問題児、邪魔者と言われている子ども達もダイヤモンドの原石。一人が原石を拾い上げ、社会が磨き上げていく。」
「たくさんの人の協力は必要とするが、子ども達の輝ける場づくりをしたい。」
熱い言葉の数々が繰り出していたのは、きっと内野先生の薫陶を受けてのことでしょう。今井さんの人生をかけた挑戦はまだまだ続きます。
(取材:高橋政行)


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